太いタイヤとホイールがもたらすもの ― 設計基準から逸脱した負荷

 『何といっても、装着されるタイヤのキャパシティが違いすぎるというのだ。R33の基準車もプアなタイヤが付いているわけではないが、それでもホイール&リムは6.5J、R32GT-Rでも8Jであった。しかしR33GT-Rは、一挙にそれを9Jとした。
 「ボディへの入力が、ケタ違いに大きくなってますからね。まず、どんなボディをもってきてもダメだったと思います」(双葉社刊 最速GT-R物語 家村浩明氏著より)』

最速GT-R物語―R33GT-R 史上最強のハコを創った男たち (日本語) 単行本 – 1996/12/1

 1995年1月にデビューしたR33GT-Rの開発過程を記した書籍の一節です。

 先代モデルに較べて大型化したとはいえ、当時最強のクルマを開発する過程で、R33GT-Rの試作車は9Jのホイールは履きこなせませんでした。

 翻って、1971年10月にデビューのHS30 240ZG。
 5Jの鉄製ホイールに175HR-14のバイアスタイヤを履きます。

 これが格好悪い―。

 車体の基本が標準車(S30Z)と同じで、オーバーフェンダーがあるからといって、内側の鉄製ボディのホイールアーチの拡張も、サスペンション周りのジオメトリーの変更も行われていない240ZGは、その細いホイールと相まってまるで電車のように見えたものでした。

 そこで、マイナスオフセットのワイドホイールを、太いタイヤを履かせる。RSワタナベ、ロンシャン、ハヤシ等々こぞって皆、履き替えたものでした。タイヤはピレリーのチンチュラート(P7)か、ヨコハマのアドバンタイプDが定番だったでしょうか。

 これが新車当時ならまだよかったでしょう。

 でも、今は生産開始から40年経ったクルマなのです。錆で穴の空いてるクルマも多いでしょう。車体を構成する鉄だって、経年劣化で鈍って(なまって)います。

 ワイドホイールにハイグリップタイヤ。Aピラー、Cピラーの板金ハンダが盛られた部分に亀裂が入ります。ハブベアリングにもガタもくるでしょう。そしてスタッドボルトも悲鳴をあげます。タイヤ交換時に折損なんてことは日常茶飯事です。次はデフか、ドライブシャフトか、リアアクスルか。

 これに関しては現代のクルマとは丈夫さが違いすぎるのです。根本的な解決方法はありません。
 どうしてもワイドホイールとタイヤを履きたければ、ハイグリップタイヤを選ばずに、なるべく昔のグリップレベルに近いタイヤを探して、おとなしく丁寧に乗ることです。

 見た目は格好イイですから充分に満足感も得られます。

 でも―。

 どうしても速く走りたい人―。

 その場合は、車体補強を行うしかありません。ロールケージの装着だけではダメですよ。局部的にも車体全体的にも見てその作業ができる人を探し、補強作業をお願いするしかありません。

 そして、その作業工賃は、莫大な金額がかかることでしょう。

 それでもハイグリップタイヤとワイドホイールを履きたいですか?

2009.02.07 初出
2020.04.13 改訂

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waka
 旧車ブロガー、スーパーセヴンとミニが大好きな高校3年生のwaka(Jr.)です。
 「S30Z&240ZGとの旧車ライフ!」では、父が日産フェアレディZ、240ZGや仲間たちのS30Z、その他のクルマたちに囲まれていた1990年代頃から書き綴ってきたコラムを中心に、僕が改訂して投稿しています。
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