究極のエンジンを探して(その2) ― How to build LY28クロスフローヘッド

LY28チューニングマニュアル

 LY28クロスフローヘッド(以下、LY28ヘッド)を作りたい?

 そんなぁ。

 何の目的で?―。先述しましたが、同じお金をかけるなら今のL型チューンの方が速いと思いますよ。

 レアパーツだから?―。まぁ希少性は認めますが、そんなもの再生産されたらいっぺんに価値が吹き飛びます。

 「LY28ヘッドは速い」、ということを証明するため?―。それならわかります。ただし、そのためにはエンジンが1基や2基では足りません。

 最低でも50基、できれば100基程度量産して、プライベーターからプロのチューナーまでいろいろな人の手に届くようにしておく体制が必要になります。

 そうして様々なテストを繰り返さないと、安定して速いエンジンは積み上げられないのです。

 レーシングエンジン以外で、世に広まり、プライベーターの手により高性能を誇ったエンジン。

 例えば、ポルシェ911の空冷エンジン。

 例えば、マツダRX-7のREエンジン(13B)。

 例えば、日産(Datsun = ダットサン)フェアレディZのL型エンジン(L28)。

 どれもプライベーターに愛され、ヨーロッパや北米で、L型は特に日本でレースに使われていたエンジンです。

 その理由は量産品だったから?―。
 えぇ、そうです。 

 プライベーターが手に入れやすかったから?―。
 えぇ、そうです。

 プライベーターが速いエンジンを作るには大量生産されたものでなければならないのです。失敗してもすぐ代替品が見つかりますからね。

 失敗を恐れて、希少性ゆえに大事に扱ってもLY28ヘッドの速さには繋がらないでしょう。

 運良く、LY28ヘッドを生産できる『型』があったとしても、やることはまだまだあります。

 高性能、高耐久性を望むなら、昔のままのLY28ヘッドを作ってもしょうがないじゃないですか。

 例えば特徴のシーリングリング。燃焼室の機密性確保として当時は使われていたのでしょうが、メタルガスケットのある現代ではブロックを傷めるとして使われない技術です。これはなくします。

 バルブガイド。これも最近の素材のものにすれば、バルブのがたつきの心配もなくなるでしょう。

 シートリング。現在のR35GT-R用の素材を使えば耐久性は抜群でしょう。高性能なエアクリーナーをつければ、10万kmはタペット調整から開放されるかもしれません。

 カムシャフト。これはメイク&トライですね。今あるL型の高性能のカムのプロフィールを参考に試していくしかありません。

 どのくらいの金額がかかるのでしょう。

 何人ぐらいLY28ヘッドを手に入れたい人がいるのかな。

 全国にどれだけLY28ヘッドに恋焦がれている人がいるのかな。

 高みを得るための情報をやり取りできる人間同士の信頼関係も必要です。

 最近はそんなことを考えていたりします。

 あ~ぁ、愚の骨頂。

追記(2020.05.08)
 LY28ヘッドの本物があれば複製品製作が容易になっている件について

 5年程前からでしょうか。小ロット(5基程度)での鋳造品製作を請け負ってくれる業者が増えてきました。
 もちろん、1基あたりの単価は大量生産のそれよりは高くなります。

 また、3Dプリンターの技術から、「本物」があれば3Dスキャンを活用しての設計図作成も容易になりました。
 もちろん、水穴など入り組んだ箇所は職人による測定が必要です。

 しかし、LY28ヘッドの本物を借りるなどして用意できれば。
 その複製品を製作しやすくなっている、現代の環境であることを記しておきます。

2009.05.16 初出
2020.05.08 改訂

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waka
 旧車ブロガー、スーパーセヴンとミニが大好きな高校3年生のwaka(Jr.)です。
 「S30Z&240ZGとの旧車ライフ!」では、父が日産フェアレディZ、240ZGや仲間たちのS30Z、その他のクルマたちに囲まれていた1990年代頃から書き綴ってきたコラムを中心に、僕が改訂して投稿しています。
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